うちのペット事情
昔、フィリピンの時代まで、うちの家にはいつも犬がいた。日本に住んでいた時は、父が獣医さんからもらってきた「バズ」というメス犬がいた。サルーキとボルゾイのハーフで、いつも押すとキューキュー鳴るゴムのおもちゃを自分の子供だと思って大事に育てていた。今考えると、発情期後のホルモンバランス(pseudopregnancy)のせいだった。
次に飼っていたのはフィリピンで飼っていたダックスフンドの「マニース」。タガログ語で確か「豆」という意味だったような気がする。一歳にもならないうちにジステンパーで死んでしまった。ある日、突然元気がなくなり入院した。退院してきた時は元気だったのに、それからすぐ、学校に行く前にご飯を食べているマニースを見たのが彼の最後の姿になった。うちの親はジステンパーの予防注射を受けさせてなかったのだろうか・・・?
最後にフィリピンで飼った最後の犬はバセットハウンドの「ジャニワリー」、一月にうちに来たから安易な名前をつけられた。子犬のうちからシワだらけの犬で、うちの父が「これがかわいいんだよ!」と気に入っていた。しかし、この犬は成長すると感情のコントロールがきかない犬になった。そして、その原因は私と弟・・・。当時10歳と5歳ぐらいの私達は、しょっちゅう子犬と遊んでいて(遊ぶというよりからかっていた)、遊びの度が過ぎて子犬のジャニワリーはすぐ興奮して感情コントロールがきかない犬になってしまった。すまないことをしてしまったと反省している・・・。ジャニワリーは成犬になったある大雨の夜、家のゲートが開いていていなくなってしまった。フィリピンのことだから、誰かに盗まれて売られてしまったか、もしくは食べられてしまったのではないか(フィリピンでは犬を食べる習慣がある)、と父が言った。幼い私にとって「ジャニワリーはたぶん誰かに食べられてしまったかもな。」という慰め方はなんとも辛いものがあった・・・。
その後、ウサギ、モルモット、砂ネズミ、イタチ(フェレット)、イグアナ、イモリなどいろいろ飼っていたが、アメリカに移り引越しが多かったので犬を飼うことはなかった。
飼っていたウサギの名前は「ウサ」。なんという安易で最低の名前だろう・・・(ちなみにモルモットは「モル」)。もうちょっとましな名前があっただろう、と名づけ親の中学生の私に言いたい。ウサとモルは同じ日にうちに来た。おじいちゃんからのプレゼントだった。しかし、モルは半年もたたないうちに死んでしまった。エサをやっているのにどんどん痩せていき、何が原因なのか分からなかった。獣医につれていくと、極度の「ビタミンC不足」。類人猿とモルモットは体内でビタミンCを作ることが出来ないなんて、当時の私は知らなかった。それにペットショップではそんなこと説明されなかった。ウサギと同じエサを食べるからと言われていた・・・。徹夜でスポイトでビタミンCをあげたが、モルは体を支える力も残っていなく、私の手の中で息を引き取った。ショックだった・・・。
一方、残ったウサはその後五年以上我が家にいた。ニューヨークで二回引越しをし、その後のシカゴの家まで一緒についてきた。最初はケージにいたが後の四年ぐらいは家の中で放し飼いになり、家中ウサギの糞だらけ。その後、弟が「かわいそうだから野生に返してやりたい」とのことで、シカゴの家の庭に放された。最初は家と庭の半々で生活していたウサだが、そのうち完全に野生に返ってしまった。テレビの前で寝転がりブヨブヨに太っていたウサは、野生に返りスマートな筋肉質な本来のウサギに戻った。ウサは家の回りにいた野ウサギ達と比べ体が大きかったので、時々雪の上にウサのであろうでかい足跡が残っていた。驚いたことに春になるとウサは野ウサギのガールフレンドが出来ていた。そしてしばらくすると彼女と共にうちの庭から引越ししていってしまった。最後に見たのはウサとガールフレンドのツーショットだった。
我が家の砂ネズミの「はん太郎」と「らん太郎」は、シカゴのペットショップで二ドルで買われた。彼らも何故か家の中で半放し飼いになっていた。シカゴからニューヨークへ引越しの時(うちはシカゴ→ニューヨーク→シカゴと引越しをした)、はん太郎とらん太郎は弟と私のポケットに入れられたまま飛行機に乗った。飛行機の中、箱の中で動きまわっていたのでカサカサいってスチュワーデスに変な目で見られた。四年ほどたった時、はん太郎は尻尾に腫瘍ができ二百ドルの手術代を受けることになった。親には、
「二百ドルの手術なんてとんでもない!百匹新しいネズミ買えるんだぞ!」
と言われてしまったが、弟と私の小遣いで手術代は払われた。子供には痛い出費である。そして、腫瘍の手術の後は一年ほど生きて、結局五年でその命をまっとうした。長生きで健康なネズミだった。
しかし、やはりうちのペットの中で一番強烈なインパクトがあったのはイタチだったと思う。弟の親友がオーストラリアに帰る時、検疫が一年だからかわいそうということでうちが預かることになった。これもやはり放し飼いで、家の中をヘニョヘニョ体をくねらせて歩く不思議な生き物だった。かなり頭が良く、意地悪して部屋に入れてあげなかったりすると、仕返しにドアの前でウンコをしてくれた。大学からたまに帰ってきた私が、一番の被害者だったような気がする。フルタイムの住民ではない私はよくイタチのウンコ攻撃にあった。おまけにソファーの下の空間を自分の巣だと思っているらしく、夜になるとソファーの中で寝て、朝になると蛇のようにソファーの下から出てきた。おかげで家の中はいつも独特の獣の匂いで充満していた。実家はいつもイタチ臭くてみんなに不評だったと聞く。このイタチも長生きし、最後は腎臓ガンになった。最初お尻だけ毛が抜けていき、半年もすると体中の毛が抜けてクネクネと歩くピンク色の蛇みたいになってしまった・・・。
「な、なんだ、この生き物―!」
弟の友達がよく叫び声をあげていた。脱毛はとどまることを知らず、ついに顔の毛も全部ハゲた。フワフワ毛が生えた動物がハゲになった時ほどびっくりすることはない。うちのイタチはナミビアに住む「裸ネズミ」そっくりな奇妙な生き物へ変身してしまった・・・。するとイタチが丸裸になってしばらくして、うちの弟が「フェレット・キャンサー・ソサエティー」とうNGOを探してきた。なんでもガンのイタチのシェルターらしい。うちのイタチも五年以上も人間しか見なかったので、余生はイタチ同志で過ごした方が幸せなのではないか、ということでそこに送られた。弟がシェルターにイタチに会いに行くと、我が家のイタチは同じく丸裸のピンク色のガールフレンドが出来て一緒に仲良く遊んでいたらしい。その後はさらに引越しが多くなったのと旅をしていることが多かったので、ペットを飼う機会には恵まれなかった。
そして、今、私の家は六匹の犬がいる「犬屋敷」。うちの群れのメンバーは:
「ヤマト」 (メス)
ジャックラッスル・テリアというイギリスの小型狩猟犬。生れつき涙腺に異常あり。コユキとカズーリ(友達のうちの犬)のママ。体重六キロ。
(photo-94)
「コユキ」(メス)
ヤマトの娘。お腹の中でへその緒が後ろ足に巻き付いていたことから、生後すぐに足の壊疽で指が二本なくなった。Chronic Pyodermaに悩む子犬。現在・体重五キロ。
(photo-177)
「マイレ」 (卵巣なしのメス)
アニマルシェルターからの子。元カンゲミというスラムに住む犬。通称「カンゲミ犬」。体重二十五キロ。
(photo-165)
「ランマ」 (メス)
図体だけでかいおバカちゃんのグレート・デン。声がライオンのようにでかいが気が弱い。体六十キロ。
「ムサシ」(睾丸なしのオス)
ドーベルマンとロットワイラーのハーフのオス。キレるのが早い。HIP DYSPLASIAの初期症状あり。体重三十五キロ。
(photo-93) ランマ(左)とムサシ(右)。
「マリモ」(メス)
ローデシアン・リッジバックとグレート・デンのハーフ。なぜかとても小さい。顔と図体はローデシアン・リッジバックとアメリカン・ブルテリアみたい。体重30キロ。
(photo-167)
後、私がナイロビに来て一番始めに飼った「チビ」というジャックラッスル・テリアとダックスフンドのハーフのオスだったが、彼はたった十ヶ月の人生にピリオドをうってしまった。
ナイロビでは通常一軒家に住んでいる人は犬がたくさんいる。でも、たいがいの人は「なんでそんなに犬を飼ってるの?」と聞かれる。うーん、何でそんなに飼っているのかって聞かれても困る。好きだから、というのが一つ。たった一人で辛い勉強している時、どれだけ彼らのおかげで励まされたか分からない。もう一つの理由はセキュリティーのため。ナイロビの一軒家に住んでいて犬がいない家は聞いたことがない。大型犬は泥棒に対する威嚇にもなるし、人間に聞こえない音も聞き取ってくれる犬達は泥棒に対するアラームにもなるのである。
一ヶ月間の自分の食事代より犬のご飯代の方が高い。おまけに犬が逃亡を繰り返すためにフェンス修理にとんでもないお金がかかっている。うちの犬は人間だと思う。どんなにフェンスを強化してもすぐ逃げて行ってしまうし、フェンスも人間のように前足を使って上って行ってしまう。強化フェンスの下の地面には有刺鉄線のフェンスを作ったのだけど、逃亡は今だ止まらない・・・。有刺鉄線のフェンスをどうやって怪我なしで抜けているのか分からない。外に出ると外国種の犬は盗まれて売られたりするし,犬が嫌いで毒をもったりする人もいたりする。それに私の犬は甘やかされているが、夜うろついている犬達はスラムの野犬達である。向こうは場数踏んでいるから喧嘩になったら小型犬は殺されるだろうし(実際にそれで一匹犬を殺されている)、逃亡されると本当に心配事が多い。最後のホープだった有刺鉄線もイタズラ犬達に効果がないので困り果てている今日この頃である・・・。

