獣の女医 in アフリカ

不治の病

テストの度に私はすごいストレスを感じる。1年生の時から期末テストの度にストレスから来る病気になっている。

臨床が始まった3年生。病理学やら薬理学やら、勉強が難しくなり、ストレスがさらに倍増。3年の2学期になって、ある日突然午後になると目眩と頭痛がするようになった。朝はちゃんと頭がすっきりしているのに午後3時ぐらいになると、なんか頭がフラフラしてきて、夕方には目眩と頭痛がひどくなる。確か、テストの一ヶ月前ぐらいだったと思う。勉強しなきゃ、と夜机に向かうと、頭がガンガンして、教科書を読んでノートに書き込みをしようとするだけの頭の動きだけで目眩がして何も出来ない。

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試験があるから病院にも行けないし、勉強が出来なくて半ばパニック状態。

知り合いにお医者さんがいたので、彼に相談してみた。すると、

「あなたの左と右の脈の強さが違います。これは大動脈炎症候群という病気ですよ。」

「え・・・。この目眩と頭痛はどうやったら治るんですか?」

「大動脈炎症候群は生まれつきのもので、治る病気じゃないんですよ。東洋人女性に多く、30代ぐらいから発病する人が多いいですね。」

「治らない・・・?」

「大動脈炎症候群の人間は全身麻酔とかする時に死んでしまう可能性が多く、ハイリスク患者で、大動脈に負担がかかっているから運動量も限られるでしょう。でも、普通に激しい運動などしない生活する分には支障はないと思いますよ・・・(ショックで、後は聞こえず)。」

不治の病・・・?この目眩と頭痛が一生治らない・・・?体力も続かない・・・?普通の生活しかできない・・・?

「その大動脈炎症候群だという可能性ってどのぐらいなんですか・・・?」

「ほぼ99%ですね。親にも連絡した方がいいと思います。」

もうお医者さんの声も聞こえなかった。教科書の文字を読むだけで、目眩で立ちあがれない。頭がフラフラして頭痛もひどい、体力勝負の獣医の仕事なんてこのままでは出来ないだろう。一人でケニアに住んでずっと勉強してきて、後2年ちょっとだというのに獣医になるのを諦めなきゃいけないのか・・・。悲しくて悲しくて、一人夜中に涙が止まらなかった。今まで、なんの為に勉強してきたのか分からない。病気をしてまで勉強し、私生活すべて犠牲にして獣医になろうとしてるのに・・・。一晩中泣き続けて、次の朝は、発作みたくなり息が出来なくなった。

「ちゃんとした大きな病院行って検査してもらいなよ!」

ショックで何も出来なかった私を心配した弟がわざわざハワイから電話してくれた。

「分かった・・・。明日ちゃんと病院で検査してもらうから。」

検査してもらって、何か変わるのか。不治の病だったら、治ることはないのだろうか。獣医は絶対に諦めたくない。でも、こんな体調では今年のテストは受けれそうもない。もしかしたら、一年間休養したら来年は勉強が続けられる体力があるかもしれない・・・、と、病院に向かう道で私はすでに留年をする覚悟を決めていた。ナイロビのアガカン病院。インド人が建てた病院で、設備もいい。その心臓科のインド人の先生にエコーで見てもらうことにした。

「ある先生から大動脈炎症候群と診断されたんですけど、セカンド・オピニオンを聞きにやってきました。」

「大動脈炎症候群。確かに東洋人の30代の女性に多い病気ですよね。」

エコーを受け、その他にもいろいろなテストをして、2時間後、先生の部屋に呼ばれた。

「どうでしたか・・・?私は大動脈炎症候群なのでしょうか?」

先生は診断書を見ながら、

「いろいろテストをしてみましたが、結果出ましたよ。」

深呼吸をして、彼の話を聞く心構えをする。

「分かりましたよ。あなたは大動脈炎症候群ではないということが。」

え?大動脈炎症候群ではない?それって、獣医の勉強を続けられるってこと?ハードな獣医の仕事も体力的に大丈夫ってこと?留年しないでこのまま勉強が出来るってこと?

「あなたは、過呼吸ですよ。ストレスで変に呼吸数が増えていて、午後になると二酸化炭素が足りなくて頭痛や目眩がしていたんです。」

それだけ・・・? (だ、誰だよ、大動脈炎症候群とかとんでもないこと言ってた奴は・・・?)

「それって、袋を自分にかぶせて呼吸すれば治るってやつですか・・・?」

先生は大笑い。(私には笑い事じゃないんすけど)

「袋をかぶるのは変なので、次に目眩とか頭痛がしたら、ゆっくり呼吸をするように心がけてください。それだけで、大丈夫ですよ。」

どうやら、ストレスから知らぬ間に呼吸数が増えていて、それで不治の病なんて誤診されたからさらにショックで呼吸困難になる発作まで起こしたらしい。

1ヶ月後、偶然、大動脈炎症候群と判断したお医者さんに会った。

「あ、久しぶりじゃない。このごろ体調どう?」

無責任な診断をして、言うことはそれだけかい?ムッとしたので、

「アガカン病院行ったら、過呼吸でした。」

と言うと、彼は、

「あっ、そうなんだ。」 (おい、それだけかいっ?!)

不治の病と過呼吸を間違えるって、それって、「あー、こないだ君はエイズだって言ったけど、ごめん、風邪だったみたい。」っていうのと同じレベルの無責任な間違いじゃないの・・・?!大泣きしたのと悩んだのはいいとして、とりあえず私は彼に言いたい、

「親と弟に泣きながら電話した3万シリングの電話代と、アガカン病院でかかった3万シリング返せっ!!」