獣の女医 in アフリカ

7月16日

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この1ヶ月ほど、サイモン・トレバーというカメラマンがマラトライアングル内の野生動物やレンジャーの活動などを撮影しています。サイモンは、African Environmental Film Foundation (AEFF) という団体を立ち上げ、映像を通してアフリカの環境問題を現地の人に理解してもらうとしている人。気さくだけど、シニカルな笑いを取る、かなり楽しいおじいちゃんである。

サイモンはもう40年以上もアフリカ内で撮影をしていて、元々はアイザック・ディネーソンの「アフリカの日々」や「愛な霧のかなたに」などの映画撮影などにも関わっていたりして、普通のメディアワークをしていた。でも、10年前に映画関係の仕事から離れ、アフリカ各地で問題視されている象牙密猟を始めとして、森林伐採、水資源の汚染など様々な環境問題を映像を通して現地の人に問題の重大さを伝えることを目的としたAEFFを立ち上げたのである。

近年のアフリカの子供達の大半は、「野生動物との接触」=「害獣」というシチュエーションでしか野生動物との関わりがないことが非常に多い。田舎の子供達は、保護区の中の動物を見に行くこともなければ、テレビなどで野生動物の映像を見る機会もない。彼らの中では、「ゾウ」は「トウモロコシ畑を荒らす害獣」であり、「ライオン」は「家畜を襲う害獣」ととらえられることがほとんどである。森林を計画なしで畑にする為に伐採し、乾いた土地に大量の家畜を放牧することが、将来的にどのような環境破壊に繋がるのか?毎日を一生懸命生きている彼らに、「未来の投資」としてなぜ環境を保護しないといけないかなどは、頭に浮かばない。炭を作る為に木を切り倒し、畑を広げる為に森林を伐採する。そして、5年後なぜ禿げ山になってしまった土地に作物が昔みたいに実らないのか、なぜ土壌が流れ出してしまうのか、なぜ雨があまり降らなくなってしまったのか、などが「森林伐採」と繋がっているとは夢にも思わない。

サイモンが撮るのは、ケニア内で彼が40年間に渡って見て来た環境破壊の原因となる出来事と、それがどのような未来を導くのか、それをどうやって止めることが出来るかである。そして、そのナレーションは英語、スワヒリ語、そして、その問題が重視されているエリアに住む部族の言葉である。大自然と隣り合わせに強く生きているアフリカ人に、アフリカの環境問題を理解して欲しい。そして、小さいながらも彼ら一人一人の日常的な努力を通して環境破壊を止めたい。そんなサイモンの思いが込められた映像は、野生動物保護区や森林保護区の回りにある学校や集会所を始めとして、ケニア全国の学校などでいろいろな言語で放映されている。

ハイビジョンの映像には比べ物にならないが、ほとんどの子供たちにとって自分たちの理解出来る言語で自分たちの土地で起きている問題を映像で見るのは初めてである。電気のない場所での放映がほとんどなので、彼のモバイルフィルムのスタッフは車にプロジェクターや発電機を詰め込んでケニア各地を走り回り、毎回1000人近くの人がモバイル映画館に何キロも歩いてやってくる。

なぜ環境破壊が起きるのか?なぜ今やっていることが10年後に問題を起こすのか?サイモンが「環境保護を理解して欲しい」と願う人たちは、田舎で暮らしながら小学校までの教育を受ければまともなエリアに住む住民がほとんど。そんな彼らにとってサイモンの映像での説明は、脳裏に焼き付き、様々な疑問を問いかける。一人でも多くのアフリカ人にアフリカの環境を守る努力をして欲しいと、大きなビデオカメラを抱えて、サバンナを駆け回るサイモン。熱く「映像を通した環境教育」を語りながら、大声で冗談を言いながら大笑いが大好きな、元気なおじいちゃん。今、マラトライアングルで、みんなに愛されている存在である。

『JMM』より。

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