チンパンジーのマックス
クリスマスホリデーの間に KWS でまたボランティアをすることになった。けれども選挙前とみんなが休暇中いうことで、大きなトランスローケーションなどはなく、ほとんどの時間は KWS のヘッドオフィスで三週間後の寄生虫学の中間テストの勉強しているか、孤児院で暇つぶしをしていた。その孤児院でとても心が温かくなるいいことがあった。
動物孤児院には40歳のカメルーンから来たマックスっていう名前のチンパンジーがいる。そしてマックスはクリスマス前に風邪を引いてしまった。そしてマックスに薬をやりに行くことになった。
「絶対にマックスの手の届く範囲に近づいては駄目だよ。」
「なんで?強暴なの?」
「女にはね、凶暴なんだよ。」
どうやら彼は小さい時にカメルーンで飼われていた女の人にかなり厳しく育てられたらしい。その経験から大の女嫌い。女の人がケージに近寄っただけでオリの中を狂ったように走り回って辺りにある物をかまわず投げる。今までケージに近寄った女性3人の腕の骨を折っているそう。マックスは孤児院の女獣医さんもケージには近寄らせてくれないらしい。エサやり、ケージの掃除はすべて男性がやっているそう。
「マックスがあなたがケージの近くに来て気分を害したら出ていってね。」
「はい・・・。」
腕を折られたと聞いて、ちょっと怖い。その言葉に従うことにした。キーパーの男の人が薬やり始めると、私は5メートルぐらいオリから離れた所にいて見ていた。
「マックスは頭がいいから、すぐ薬って分かってしまうんだよね。」
そう言いながら彼はプラム・ジャムの中に入れられた粉末剤を混ぜた。
「それに好き嫌いが激しいから、ジャムとかジュースとかもすごく好みがあってね。」
彼はジュースを取り出した。
「このジュースしか飲まないんだ。」
見てみると、ケニアのマーケットで売っている195シルもするジュースだった・・・。わ・・・、私でもそんな高いジュース飲んでないのにぃ・・・。
マックスはジュースを唇をとがらせながらおいしそうに飲んでいた。ジュースを飲みながら遠くで見ている私を何度もチラチラと見ている。女がいるので警戒しているのだろうか。そして、しばらくするとマックスは私の方を身ながら指さした。キーパーの人がジャムに入った薬を飲ませようとしても、ずっと私の方を身ながらオリから手を差し伸べているばかり。完全にこっちに興味を持ってしまい、ジュースもほったらかし。こっちこいみたいに手招きもしはじめた。それを見てキーパーが、
「ちょっとだけ近づいてみて。」
私は近づいたら攻撃されるのかもしれないので、恐る恐る近づいた。まだマックスには私が届かない。もっと近づけと言うようにまた手招きをしている。
「もう少し近づいてみたら?」
ゆっくりと距離を縮めてゆくと、マックスの顔がはっきりと見え出した。大きな琥珀色の目、顔のシワ、手の大きさ。チンパンジーにここまで近くによるのは始めてだった。いつも野生動物と近づく時にするように心の中を空っぽにして、威嚇する気がないのを示しながら、もう一歩近づいてみた。そして、真っ黒でグローブみたいなマックスの手に向かって自分も手を差し伸べてみた。キーパーは緊張している。今までそうやって手を出した女性3人が人間の八倍はあるマックスの腕力で腕を折られている。しかし、その日のマックスは私の指し伸ばした手を優しく手を掴んで握手をしてくれた。マックスの手はひんやりと冷たい。
「驚いたな、マックスが女性の手を握るなんて。」
キーパーは驚いて言った。マックスは私の手の平を見ながら指でシワをたどりはじめた。そして手の甲を見て、私の小さいホクロをダニだと思ったのか優しくつぶし始めた。どうやらグルーミングしてくれているよう。マックスは私を友達と受け入れてくれたようである。琥珀色の目は私の手の見えないように小さいホクロまでちゃんと見ていた。一生懸命指や爪でそれを取ろうとしている。手の上についた小さい泥の欠片まで大きな黒い爪で丁寧にひっかいて落としてくれた。視力は人間となにも変わらない。その目の良さと手先の器用さに驚いた。
「あなたはマックスに受け入れられた数少ない女性だね。他の女の人は威嚇されてオリの近くにもいけないのに、マックスから女の人を触ってアクセプトするのはめちゃくちゃ珍しいよ。」
そしてマックスは黒い毛が生えた腕を伸ばすと私の顔を触った。大きなヒンヤリする指で、優しく頬っぺたや目の周りを指なぞりながら撫でてくれている。まるで人間に顔を撫でられているのとなにも変わらないほど手つきが優しい。髪の毛を触り、一本一本の髪の毛をダニがいないかチェックしている。マックスに顔や髪の毛を触らせながら、感動で私の首を簡単にへし折れるほど力がある動物だということも忘れていた。ジェーン・グドールがチンパンジーの繊細さに驚き、初めて野生のチンパンジーとのコンタクトに成功した時に感動したという気持ちがすごく理解できる。昔から動物には威嚇とかされないでアクセプトされることが多かったけれど、まさかチンパンジーにアクセプトされるとは思ってもいなかった。マックスは気まぐれではなく、その後何度遊びに行っても私の手や髪の毛をグルーミングしてくれるようになった。

初めてのチンパンジーとのコンタクトにめちゃくちゃ感動してしまったのだが、友達に話しても誰もその感動を分かち合ってくれなかった・・・。
「チンパンジーなんかと友達になっていないで、もっと遊びに出かけたらぁー?」
余計なお世話じゃい。
「女嫌いなんでしょ、そのチンパンジー?女として見られなかったんじゃないのぉ?」
いいもん、いいもん、分かってくれなくてもっ!動物に携わる人にとって動物にアクセプトされるほど嬉しいことはないんだからっ♪

チンパンジーの赤ちゃん君にキスの真似事を教える。

コップから水を飲む赤ちゃん達。

やっぱり、野生に帰りたいんだよね・・・。

